理学療法士 恩田誠(トレーナーチームEsperanza)の治療日記

整形外科勤務の理学療法士、恩田誠(トレーナーチームEsperanza)の日々の評価や治療を日記として書いていきます。あくまで個人的な見解や治療結果ですが、誰かしらのプラスになれれば!という思いで細々と書き続けていこうと思います。

野球肘…肘伸展制限改善の重要性

三郷市の整形外科に勤務する理学療法士の恩田誠です。

 

2週間ほど前、初めて肘の内側に痛みが出現した軟式野球部の中学生が来院しました。

 

初診前日の練習中にバッティングピッチャーをやっていた時に痛みが出た。肘の曲げ伸ばしをしても痛みがある。肘の可動域は屈曲(曲げる)115°、伸展(伸ばす)-15°で、それぞれ最終域で痛みが出ます。

 

レントゲン上、非投球側と比較して肘内側の骨端線に軽度の離開を認めたため、診察で1~2ヶ月の投球禁止を指示されました。

 

 

野球をやっていた保護者や指導者の方は1~2ヶ月の投球禁止期間について、どのように感じるのでしょうか?長いのか…短いのか…。

 

初診時の状態や年齢、ポジション、時期(大事な試合が近いのか?)、練習頻度などでも投球開始時期は変化してきます。

 

 

私の場合は、

  • 痛めていた肘の部分に圧痛がないか?(押して痛くないか?)
  • 肘の曲げ伸ばしで痛みがないか?
  • 非投球側と比べて可動域制限がないか?(曲げ伸ばしがしにくい状態になっていないか?)

 

まずは、少なくてもこの3点をクリアして初めて投球を開始します。特に3つ目の可動域。その中でも肘の伸展制限(肘の伸ばしづらさ)は早期に改善が必要だと考えています。

ましてや大事な成長期に制限を残したまま復帰してしまうと高校生や大人になってから取り返しのつかないことになりかねません(>_<)

 

●なぜ肘が伸びないといけない?

まず、肘が伸びないとトップポジションからリリースまでの動き(Acceleration)で肘に外反ストレスが加わりやすくなります。そのため、野球肘の再発リスクが高くなります。
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またリリース時に肘が伸びきらないため、パフォーマンスの低下や、その動きを肩・肩甲骨・体幹などで補おうとすることで他部位にも負担がかかってしまいます。

 

肘が伸びにくく、上腕二頭筋の柔軟性が欠如していると橈骨頭という部分が前方に引かれ、近位橈尺関節の動きに制限が出ます。
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この関節は前腕部分(肘~手)の捻る動きに関与するので、野球経験がある方は特にこの捻りの動きが出ないというのが重大な問題かわかりますよね?

 

先程「他部位に負担がかかる」と書きましたが、肘の伸ばしづらさや前腕の捻りに制限が出ると肩でその動きを代償します。

特にリリースに向けて、上腕骨が過度に内側に捻る動きをしてしまい肩の痛みを誘発する可能性が高くなります(>_<)
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※写真が見づらくてすみません_(._.)_

 

 

 

だいぶ簡単な説明にはなりましたが、肘が伸ばしにくいことで、再発リスクが高まる!また肩への負担も大きくなるため近い将来肩も痛めてしまう可能性が高い!というのが伝われば良いと思います(^^)

 

 

 

ちなみに、前述した3点をクリアして投球を開始しても、すぐに全力投球オッケーとか遠投もオッケーとはなりません。

投球フォーム自体の問題や、関連する部位の柔軟性、必要な筋力が備わって、初めて全力投球が許可されます。

年齢によってもフォームや筋力的な部分はゴールとなるポイントが変わってきますので、それはお近くの専門家の方や指導者の方と相談して、完全復帰の時期を設定すると良いと思います(^^)

 

 

肘の伸ばしづらさを早期に改善することの重要性がうまく伝われば幸いです。

それでは、今回はこの辺で_(._.)_