膝伸展制限に対する中間広筋へのアプローチ
治療家の方であれば膝の伸展制限(伸ばしづらさ)は早期に改善しておきたい項目ですよね(^^)
今回は、5年前から左膝に-30°の伸展制限がある患者さん。左殿部(お尻)の痛みで来院しました。
1~2ヶ月前から担当しましたが、初回評価時に膝の伸展で骨性のEnd Feel(可動域最終域での抵抗感)を感じたため、患者さんには伸展の可動域は改善しない可能性が高いかもしれません。。と伝えました。
殿部の痛みは改善してきましたが30°の膝伸展制限。跛行により長期間の歩行では殿部の違和感が出てくる状態。
幸い、現状では腰部や反対側の膝に痛みの訴えはなく、立位での脚長差は1cmの踵(かかと)の補高で跛行を軽減できている。
ちなみに膝に関しては他院でオペを勧められたが、出来ればオペはしたくないとのことでした。
伸展0°は無理でも、少しでも可動域を改善できないかと思い、再度動きを確認しました。
すると、通常30°屈曲した位置で力が抜けた状態であれば膝蓋骨(膝のお皿)が上下方向に動くのですが、この患者さんは全く動きません。
また膝伸展時に大腿四頭筋の深層で筋の緊張感を感じました。通常はほとんど直接的に触ることが出来ない中間広筋ですが、膝伸展制限により内側広筋・外側広筋ともに萎縮していたため、この緊張感を感じることが出来たのかな?と思っています。
そのため、中間広筋の大腿骨上での滑動性を改善しようと膝蓋骨直上から写真矢印の方向に少しずつ動きを出していきました。
すると、30°屈曲位での膝蓋骨の可動範囲が拡大し、膝伸展時に膝窩部(膝の裏)に抵抗感を感じるように変化しました。
膝裏にも少しアプローチをして可動域をチェックすると伸展-25°と、5°の可動域拡大を図れました。
たかが5°、されど5°。変化の兆しが見えてきただけでも嬉しいものですね(^^)患者さんも膝の変化に喜んでいました。
………しかし、この治療後に本当に膝伸展の可動域を拡げるべきだったのか?いまだに疑問に思っています(^^;
中途半端に拡がった膝や膝蓋骨の可動域、萎縮した大腿四頭筋。
荷重位での膝の安定性は保てるのか?
膝蓋大腿関節に痛みが出現しないだろうか?
自分が行った治療の結果で生じる変化にも責任を持って対応しないといけないですね。
今後のプランニングは患者さんとよく話し合って決めていく必要がありそうです(>_<)
膝の伸展制限に対する中間広筋へのアプローチも、その結果生じた疑問についても、誰かしらの参考になれば幸いです!
それでは今回はこの辺で。_(._.)_
肩が張る、上を向くと首が痛い
最近は若い人でも肩が張る、上を向くと首が痛いという人が多いですね。
原因は様々ですが、その1つの要因として、今回は胸骨(下図)の挙上制限(うまく上に挙がらない)について書いていきます。
まず、肩が張ったり上を向くと首が痛い方にはHead Forwardと言って、横から姿勢を見たときに頭が身体のラインよりも前方に出ている人が多いです。
そうすると写真のように胸骨が下にさがり、反対に後ろにある肩甲骨が上に挙がってきてしまいます。
このように肩甲骨が上に挙がってくると、僧帽筋という筋肉が緊張してしまい肩凝りの要因になってしまいます(>_<)
では、頭を後ろに引けば良いのか?
実は頭を後ろに引こうとするだけでは、首の筋肉が緊張するだけで、なかなか変化が出にくいんです。
頭は、胸郭と言って背骨・肋骨・胸骨(プラス鎖骨・肩甲骨)で構成する部分の上にあるので、土台を整えてあげないと頭の位置も変わってきません。
そのため、まずは息を吸ったときに胸骨が上に挙がってくるか確認してみましょう。長期間Head Forwardの姿勢になっていると息を吸ったときに胸骨が挙がりにくくなっていることがあります(>_<)
最近では、若い女性で背骨の生理的な弯曲が少なくなっているフラットバックという姿勢の方も多くなっています。
この状態では肩甲骨の安定性が低下し、胸郭の可動性も出にくくなるので、胸骨の動きを出すときに呼吸や背骨の動きと連動させて行うと良いと思います(^^)
そこで、今回は一人で行える運動を紹介します。
まずは、両手を胸の前(胸骨部分)に当てて、
息を吐きながら、胸骨を軽く下方に押して背中を丸めます。
次に、胸骨と鎖骨がくっつく場所(胸鎖関節)に指を当てて、
息を吸いながら、軽く胸骨と鎖骨を上(頭側)に持ち上げるように動かします。この時に背中が少し伸びてくるのを意識できるとベストです(^^)
このように胸骨の動きを出すことで頭部の位置が改善したり、背骨や肩甲骨と連動して姿勢を整えてくれるので、肩の張りや首の痛みでお悩みの方は実践してもらえればと思います(^^)
あくまで1つの要因なので、変化が出ない場合はもっと大きな原因が他にあると思います。ですので、変化が出ない方は参考程度に理解してもらえると幸いです。
記憶が曖昧ですが、恐らく……自分が臨床1年目の時はあまり胸骨に対してアプローチをしてなかったような気もするので、経験年数の少ないセラピストにも参考になれば幸いです(^^)
それでは今回はこの辺で。_(._.)_
※ちなみに「肩こり」は運動器リハビリテーションの対象にならないので保険は使えません。治す場合は保険を使わず自費診療で改善を図ってください(^^)
ステップを踏むと投げ方がめちゃくちゃになる
過去のブログにも「小学生でつま先立ちが安定しない子が多い」と書きましたが、前足部に荷重をかけてバランスを取ることが出来なかったり、動作時に過度に後方重心になってしまう子は本当に多いと、最近ひしひしと感じています。
今回は投球時に肩を痛めた小学3年生の子で、ウチに来る前に他院で2~3ヶ月リハビリをしていたそうです。翼状肩甲が問題と言われトレーニングをしていたと言っていました。
たしかに投球側の肩甲骨に安定性はありませんが、単純に肩甲骨まわりのトレーニングだけではなかなかプレイに反映されてきません。
しかも小学3年生(当時は2年生)ではすぐに単調なトレーニングに飽きてしまうことが多いんです(^^;……ほんとに。笑
今回のタイトルとは少し離れてしまうので、この辺の話は省略させてもらいます。
投球動作を指導しはじめて2ヶ月ほどで止まった状態からの投球フォームはだいぶ良くなりました。痛みもありません。
保護者やコーチからの話でも投げ方が良くなっているとのことでしたが、新年度から外野を守ることが増え、ステップを踏むと投げ方がめちゃくちゃになってしまうと相談されました。
実際にステップを踏んで投球を行ってもらうと、足の裏全面が地面に着いた状態でステップを踏んでいました。
いわゆるベタ足。ステップを踏むときもバタバタと音がなるくらいです(^^;また、下半身がうまく使えていないため、腕に過度に力を入れた手投げの状態になっています。
これではまた肩や肘を痛めてしまう可能性が高くなってしまいます(>_<)
そこで、まずはステップを踏んだ投げ方の見本を見せました。
次に前足部に荷重をかけたまま身体を動かしてもバランスが崩れないようにするため、踵(かかと)は挙げたまま膝を揃えてしゃがみこみ、
その状態からバンザイをして立ち上がる。
この運動を5回ほど行い、再度見本を見てもらってから、本人にステップを踏んで投げてもらいました。
すると、ベタ足は改善され、投球側の腕の挙がりも良くなり、腕の振りにも改善が見られました。
指導自体は大したことをやっていません。
スポーツ障害を見る上で動作の問題点を見つけられることと、単一な動作だけでなくあらゆるバリエーションの中でも負担のかかりにくい状態になっているか?を見ていけることも必要だな。と改めて感じました(^^)
実際、指導の方法は年代やポジション、選手(患者)の性格などによっても変わってきますからね。指導の方法にもバリエーションが大事ですね!
それでは今回はこの辺で。_(._.)_
あっ……次週はGWで帰省するためブログはお休みします。
肩甲骨の動きを悪くする、三角筋タイトネス
肩関節の動きが悪い方や痛みのある方は、肩甲骨が猫背のように前に出てしまっていたり、なで肩のように肩が下がっている方が多いです。
今回のタイトルに挙げた「三角筋のタイトネス(短縮)」は、特になで肩のように肩が下がっている方に該当するケースがあります。
なぜ三角筋が短縮すると肩甲骨の位置が下がる(下方回旋する)のか?
三角筋は鎖骨と肩甲骨の肩峰・肩甲棘から始まり、上腕骨の三角筋粗面という場所に付いています。
そのため、三角筋が短縮していて(黄矢印)、腕を下に下ろしている状態では、上腕骨に引かれるように肩甲骨が下がってしまう(黒矢印)のです。
では、どうやって確認するか?
簡単にできる方法としては、肩をすくめるように肩甲骨を上に挙げます。肩甲骨の位置をキープしたまま脇を閉めます。
その時に肘が身体につかない場合は三角筋が短縮している可能性があります。
三角筋が短縮していると、腕を挙げるときに上腕骨を上方(肩峰側)に引き上げてしまい、腕が挙がりにくくなります(>_<)
また三角筋が短縮していなくても、腕を挙げる時に三角筋が過剰に力をいれてしまう場合も、腕は挙がりにくくなってしまいます。
三角筋が過剰に力をいれてしまう場合においては、様々な要因が影響するため全てを挙げるのは難しいですが、今回は1つだけ関与する部分について簡単に書いておきます。
腕を挙げたときに三角筋に過剰に力を入れてしまう患者さんを診ると、よく前腕部(肘~手)の筋肉も緊張している方が多いです。
特に手首を背屈(手の甲側に手首を反らす動き)に働く筋肉です。
この筋群であれば、セルフマッサージやセルフストレッチも日常の中で取り入れてもらうのも簡単なので、通院していない時に自宅でやってもらうだけでも変化が出てきます。
なので、もし腕が挙がりにくいと感じる方は肩だけに注目せず、手首なども動かしづらくなっていないかチェックしてみてください(^^)
それでは今回はこの辺で。_(._.)_
膝裏内側の痛みに対する足部からのアプローチ
今回のブログは、誰かに伝えることを目的としたものというよりかは、自分の得た経験と感覚を残しておくものとして書きました。
ほんの少しだけ専門的になると思います。
では、気を取り直して。
膝が痛い人がよく診断される変形性膝関節症。膝の内側に痛みがある人や膝裏の内側に痛みがある人など、膝の痛む場所が少し変わるだけでも原因は変わってきます。また、変形性膝関節症と診断されても大して変形していない方も多いです。
その中でも、今回は膝裏内側の筋肉の硬さが原因で歩行時や膝屈曲時に痛みが出ているケース。
内側のハムストリングス・腓腹筋内側頭の起始部に硬さがあると脛骨大腿関節(膝関節)の内側面の動きが悪くなったり、荷重位での内側関節面への圧迫ストレスが強まったり、膝を曲げたときに脛骨内旋の動きが出にくくなる場合があります。
この場合、上記写真の丸印部分にアプローチをすることで変化が出てくることもあります。しかし、すぐに戻ってしまったり、思うように変化が出ないこともあります(>_<)
患者さんの状態は人によって違いますが……不思議なことに似たような状態で、同じ場所に痛みがあって、関連する原因が同じ患者さんが同時期に数人来ることがたまにあります。
今回もそんな感じでした。笑
膝裏内側の筋肉に硬さがあり、かつヒラメ筋や後脛骨筋などの下腿内側の筋群も緊張している。また、第1中足骨が近位の楔状骨や舟状骨に対して背側(足の甲側)に変位しているケース。
足の親指を第1中足骨の長軸方向に軽~く牽引をかけながら、
母趾外転筋を(写真)矢印方向に動きを出す。
すると、第1中足骨―楔状骨・舟状骨の位置関係が変化し、下腿内側筋群の緊張も和らぎ、膝裏内側の硬さが取れたため膝屈曲時や歩行時の痛みが軽減しました。
職場を3年前に変えてから、ほとんど診る機会が無くなったシンスプリントの患者さんにも使えそうかな~。
でも、脛骨内捻や外反母趾が強いケースには適応しないアプローチかと。。(^^;
まぁこれも、あくまで1つの方法論なので。
最後に。
なぜ変化が出ないのか?
他に考えられる原因は何か?
見落としている所はないか?
そういうことを考え続けるからこそ、見えていなかった部分が見えてきたり、イレギュラーにも対応出来るようになるのかな。と思います(^^)
普段とは少し違った書き方をしましたが、誰かしらの参考になれば幸いです。
それでは今回はこの辺で。_(._.)_
野球肘…肘伸展制限改善の重要性
2週間ほど前、初めて肘の内側に痛みが出現した軟式野球部の中学生が来院しました。
初診前日の練習中にバッティングピッチャーをやっていた時に痛みが出た。肘の曲げ伸ばしをしても痛みがある。肘の可動域は屈曲(曲げる)115°、伸展(伸ばす)-15°で、それぞれ最終域で痛みが出ます。
レントゲン上、非投球側と比較して肘内側の骨端線に軽度の離開を認めたため、診察で1~2ヶ月の投球禁止を指示されました。
野球をやっていた保護者や指導者の方は1~2ヶ月の投球禁止期間について、どのように感じるのでしょうか?長いのか…短いのか…。
初診時の状態や年齢、ポジション、時期(大事な試合が近いのか?)、練習頻度などでも投球開始時期は変化してきます。
私の場合は、
- 痛めていた肘の部分に圧痛がないか?(押して痛くないか?)
- 肘の曲げ伸ばしで痛みがないか?
- 非投球側と比べて可動域制限がないか?(曲げ伸ばしがしにくい状態になっていないか?)
まずは、少なくてもこの3点をクリアして初めて投球を開始します。特に3つ目の可動域。その中でも肘の伸展制限(肘の伸ばしづらさ)は早期に改善が必要だと考えています。
ましてや大事な成長期に制限を残したまま復帰してしまうと高校生や大人になってから取り返しのつかないことになりかねません(>_<)
●なぜ肘が伸びないといけない?
まず、肘が伸びないとトップポジションからリリースまでの動き(Acceleration)で肘に外反ストレスが加わりやすくなります。そのため、野球肘の再発リスクが高くなります。
またリリース時に肘が伸びきらないため、パフォーマンスの低下や、その動きを肩・肩甲骨・体幹などで補おうとすることで他部位にも負担がかかってしまいます。
肘が伸びにくく、上腕二頭筋の柔軟性が欠如していると橈骨頭という部分が前方に引かれ、近位橈尺関節の動きに制限が出ます。
この関節は前腕部分(肘~手)の捻る動きに関与するので、野球経験がある方は特にこの捻りの動きが出ないというのが重大な問題かわかりますよね?
先程「他部位に負担がかかる」と書きましたが、肘の伸ばしづらさや前腕の捻りに制限が出ると肩でその動きを代償します。
特にリリースに向けて、上腕骨が過度に内側に捻る動きをしてしまい肩の痛みを誘発する可能性が高くなります(>_<)
※写真が見づらくてすみません_(._.)_
だいぶ簡単な説明にはなりましたが、肘が伸ばしにくいことで、再発リスクが高まる!また肩への負担も大きくなるため近い将来肩も痛めてしまう可能性が高い!というのが伝われば良いと思います(^^)
ちなみに、前述した3点をクリアして投球を開始しても、すぐに全力投球オッケーとか遠投もオッケーとはなりません。
投球フォーム自体の問題や、関連する部位の柔軟性、必要な筋力が備わって、初めて全力投球が許可されます。
年齢によってもフォームや筋力的な部分はゴールとなるポイントが変わってきますので、それはお近くの専門家の方や指導者の方と相談して、完全復帰の時期を設定すると良いと思います(^^)
肘の伸ばしづらさを早期に改善することの重要性がうまく伝われば幸いです。
それでは、今回はこの辺で_(._.)_
反対側の肋骨が動きにくくて肩が挙がらない
右の五十肩(拘縮肩)で運動器リハ開始時は屈曲80°(腕を前に挙げる)、外転50°(腕を横に開く)だった患者さんが現在は座位で屈曲140°、外転120°まで挙がるようになりました。ちなみに腕を下に垂らした状態が0°です(^^)
仰向けに寝た状態で治療者側が動かすと150°まで腕が挙がりますが、それ以降は肩上方の痛みと後方の伸張感を訴えます。
この患者さんの肩甲骨は前傾(イメージとしては猫背)と下方回旋(イメージとしてはなで肩)の位置にありました。
そのため首周りの筋肉や三角筋という筋肉にも過度に力が入ってしまい肩の動きを制限していました。頭部・頚部・前腕からのアプローチも加えることで首回りや三角筋の硬さが取れましたが、それだけでは不十分です(>_<)
長期的に前述した肩甲骨の位置になっていることで肩甲骨だけでなく肋骨の動きにも左右差が出てきてしまいます。
この方の場合は右肩甲骨の位置の影響で体幹がやや左回旋(身体が左を向いている)してしまい、左の下位肋椎関節(背骨と肋骨間の関節)にも制限が出ていました。
この部分の動きが悪くなると、腕を挙げてきた時の背中を伸ばす動きや、肩甲骨が後傾する動きも制限してしまい、結果的に腕が挙がりづらくなってしまいます。
徒手的なアプローチでも改善は可能ですが、この患者さんは仕事の都合上、週1回の通院だったので自分で出来る運動を指導しました。
●運動方法
仰向けで、筒状に丸めたバスタオルを背骨に垂直に当てて寝る。当てる場所は寝たときにみぞおちの真下にくる辺り。↓↓↓
両膝を揃えて立てる。腕は90°横に開く。
この状態で肩が地面から浮かないように膝をゆっくり交互に倒す。これを数回繰り返す。
※肩を横に開くと痛い方は、なるべく力を抜いて腕を開ける範囲で構いません。
肋骨部分の動きに左右差がある場合は、膝を倒した時に行きにくい方が出てくるので、行きにくい方を多めに動かすのも良いと思います(^^)
簡単にできる運動ですし、慢性的な腰痛のある方にも効果的なので、ぜひ実践してみてください。
ちなみに、この患者さんは上記の運動後に屈曲160°まで可動域が拡大し、肩上方の痛みが軽減しました。
しかし、あくまで可動域を制限している様々な要素のうちの1つなので、治療の中の1つの方法論や知識として考えてもらえるとありがたいです。
少しでも参考になれば幸いです。
それでは、今回はこの辺で。_(._.)_